私はこれまで約25年間、医師としての道を歩んでまいりました。
最初の10年ほどは、新潟市をはじめ佐渡、上越、新発田などで、一般内科・呼吸器内科医として地域医療や救急医療に従事し、多くの患者さんや医療スタッフとともに、医師としての土台を築く貴重な経験をさせていただきました。当時は呼吸器内科として、肺がん診療はもちろん、肺炎やインフルエンザなどの感染症に加え、気管支喘息や睡眠時無呼吸症候群といった、日常的にみられる疾患も専門としていました。肺がんももちろん治療にあたっていました。当時の肺がん治療は現在のように効果的な治療法は多くなく、患者さんやご家族とともに、つらい思いを重ねたことを今でも覚えています。
ある患者さんとの出会い
そんな日々のなかで、ある若い男性のがん患者さんからかけられた言葉が、私の人生を大きく変えました。
「がんは治らなかったけど、先生に治療してもらったから悔いはない。もし生まれ変わって、もう一度同じ病気になっても、また先生、主治医をやってくれよな。」
この言葉に出会い、たとえ命を救うことができなくても、心を癒やすことはできる――そんながん治療の本質を教わった気がしました。
その後、がん診療を本格的に学ぶため、静岡がんセンターに国内留学し、肺がんを中心に幅広いがんの診療に携わりました。この期間の「がん薬物療法専門医」の資格を取得し、帰任後は新潟大学を経て、2015年より新潟県立がんセンター新潟病院で勤務。数多くの新薬の治験、臨床試験に携わり、世界の最先端での診療を経験してまいりました。
また、この10年間は、まさにがん治療が“革命的進化”を遂げた時代でした。分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬などの登場により、これまで寛解(=がんが長期にわたり落ち着いている状況)が難しかった脳転移や骨転移を伴う進行がんでも、少数ながら寛解が得られる症例が見られるようになっています。
あのときの若い患者さんに、今の治療薬を届けられていたら――そう思わずにはいられません。
これからの地域医療へ
現在、日本では2人に1人ががんを経験する時代となり、高齢化の進展とともに「がんサバイバー」は今後ますます増えていくと考えられています。しかし、地域のクリニックでは最新のがん治療に関する知見が十分に共有されておらず、気軽に相談できる場所が少ないのが現状です。がんセンターでの経験を生かし、この現状を少しでも改善できればとの思いから、当クリニックを開業いたしました。
当院は、かぜや高血圧・高脂血症といった生活習慣病はもちろん、肺炎や気管支喘息などの呼吸器疾患、そしてがんの有無にかかわらず、誰もが安心して相談できる存在でありたいと考えております。
これからも、当院に関わるすべての方々に笑顔と安心をお届けできるように、皆さまとともに歩んでまいります。